日付けが、変わった。





君たちが眠った。
やれやれ今日も終わったのだと、ようやく自覚することが出来て、
パパとママは顔を見合わせ苦笑する。
熱いコーヒーの入ったカップを差し出すママに、パパが笑う。


そしてパパはパソコンへ向かって再び仕事を始める。
ママは大好きな文章を紡ぎだす。
静かに、静かに…時々コーヒーをすする音や咳払いの音がするほかは、
本当に静かに時が流れていく、ママの大好きな時間。


ふと顔を上げて、気づく…日付けが変った。
もうこんな時間なのだと驚いて、パパとママは君たちが眠っている
部屋へ行こうと階段を上がる。
君たちを起さないように、楽しい夢を見ているかもしれない君たちの
邪魔をしないようにそっと開ける扉の隙間から、暗い部屋に漏れるのは、
眩しい眩しい階段の明かり。
そろいも揃って布団を蹴飛ばして眠っている君たちの丸いお腹へ、
もう一度布団をかけなおしながら、パパとママはまた顔を見合わせて
笑う。
こんな風に慌しくて、けれどどこかゆったりとした時間が流れる、
一年の間のほんのわずかな時…それはきっと誰もが神様からもらえる
『特別な空間』。
だってその証拠に、道行く人たちの顔は皆、どこか優しい。


日付けが、変った…今年はもう去年になってしまったのだと
少しの寂しさとどこかワクワクするような気持ちを胸に、
パパとママはやがて君たちの側で眠る。
側にいてくれてありがとう。ちょっぴりずるいけれど、君たちの
温もりをコタツ代わりにしながら。


『明日』は誰が一番最初に目覚めるのだろう。 




FIN〜





著者後書き:大晦日からお正月へ、日付けが変わる瞬間。何だかとても特別な時間のような気がして、
新しい年が来るのが勿体無いような、来て欲しいような(笑)、ちょっとわくわくするような気分を。